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第十二話 「私にも描けるかな」

مؤلف: 辻野幸枝
last update تاريخ النشر: 2026-07-04 03:31:57

図書館からの帰り道。

 夕焼けが街を橙色に染めていた。

 ひまりは隣を歩く蒼をちらりと見た。

 ――絵本を描いてみたら?

 その言葉が、ずっと頭の中をぐるぐると回っている。

 「……絵本かぁ」

 思わず呟く。

 「うん」

 蒼が隣で頷いた。

 「相沢さんなら描けると思う」

 「いやいや……」

 ひまりは苦笑した。

 「私、イラストを描くのは好きですけど、絵本なんて作ったことないですよ?」

 「でも、好きだったんでしょ?」

 「え?」

 「絵本」

 ひまりは少し黙った。

 そして、小さく笑う。

 「……好きでした」

 子どもの頃を思い出す。

 仕事ばかりの日々だった。

 朝から撮影。

 夜までレッスン。

 友達と遊ぶ時間なんてほとんどなかった。

 でも、家へ帰ると、母がいつも絵本を読んでくれた。

 動物の絵本。

 星のお話。

 魔法使いの物語。

 ページをめくるたびに、違う世界へ行ける気がした。

 「私、寝る前に毎日読んでもらってたんです」

 「へぇ」

 「撮影で疲れていても、絵本を読むと元気になれて」

 ふふっと笑う。

 「だから、ボロボロになるまで読んでました」

 「いいね」

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